黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
 あの夜、私が陛下の手を振り払ったのを嫌っていると、彼は勘違いしている。それを正したいのに、今の私にはできそうにない。悔しくて悲しくて下唇を噛みしめた。

「だけど彼女がこんなことになって後悔したよ。嫌われることを恐れず、もっと俺のことを知ってもらう努力をするべきだった」

 胸が大きく高鳴って、考えるより早く口が勝手に動いた。

「私は、陛下が好きです」

 陛下が大きく目を見開いた。それからふわりと柔らかく顔をほころばせた。

 陛下が笑った……。

 美しい微笑みにぼうっとくぎ付けになっていたら、陛下の手がポンと頭の上に乗る。

「俺も好きだぞ」

 心臓が潰れそうなくらいギュッと締まって、大きな音を立てた。うれしくて泣きそうなのをがまんしていると、陛下が私の頭をポンポンと頭を撫でた。

「ロゼは優しいな」

 瞬間、全身が一気に冷たくなった。

 そうだったわ。今の私はオディリアじゃないのよ……。

 陛下が言ったのは小さな子どもに対する友好の意。私が口にした『好き』とは種類が異なる。

 いいじゃない。姿や年齢が違っても気に入ってもらえているということだ。嫌われるよりずっといい。そう考えるのに胸が痛くてたまらない。

 何も言えずにうつむいていると、陛下はポンポンと私の頭を撫でた後、膝に抱いていたオディリアをそっとベッドに戻した。

「名残惜しいけれどそろそろ行かないとな」
「え?」
「言ってなかったか? 今日はこれから帝都の外へ視察に行く」
「視察へ?」
「ああ。終戦から半年たった今、国民に何が必要なのかをこの目で見たい。教皇も治療のための人手が足りないと言っていたからな。必要なら医師団の派遣も検討するつもりでいる」
「そうなのですね」

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