黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~

「なるほど。毒を飲んで気を失った末、体は眠ったままで精神だけが幼児の姿で具現化した、というわけですか」
「はい……。でもまだ毒と決まったわけではないのですが」
「許せませんね。仮にも大聖女たるあなたに毒を盛るとは。見つけ出したあかつきには、どんな地獄を味わわせてあげましょうか」

 お義父様の瞳にメラメラと復讐の炎が見えそうな気がする。

「そんな物騒なことをおっしゃらないでください」

 最高位聖職者の発言とは思えないようなセリフを、誰かに聞かれたらどうするのだ。

 これだからこの方に頼るのは最後の手段にしておきたかったのだ。

 教皇様は、信者に対しては常に慈愛に満ちているが、教皇庁の長としてはとても厳格な方だ。
 そんな彼は、プライベートでは父親として私のことを溺愛してくれている。結婚式のときも、もし王宮で何か困ったことがあればいつでも言いなさいと言って送り出してくれた。だからこそ私は、養女である自分のために教皇様の手をわずらわせたくないと思ったのだ。

「犯人に対しては後で考えるとして、今はあの状態をなんとかする方が先決です」

 お義父様の視線が私の後ろへと向かう。

「おそらく生命の危機に陥ったことで、あなたは無意識に神聖力を発動させ、死を防いだのでしょう」

 自分でも薄々気づいてはいたけれど、教皇であるお義父様の口から改めて聞くとゾッとした。聖女の力がなければとっくの昔に死んでいたということだ。

「普通の聖女なら不可能ですが、並外れた神聖力を持つあなただからこそできた力技でしょうね」

 お義父様はしみじみと感心するようにそう言った後、オディリアの生命を維持することに神聖力を全振りしているため、幼児化している私は神聖力が使えないのだろうと言う。

「お義父様、なんとかして私が自分に癒しの力を使う方法はないのでしょうか」

 本体が死にかけているから分裂したのだとすれば、その体さえ回復すれば元に戻れるということでもある。自分の力でなんとか本体を癒せたらと思った。
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