黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「やること? 何をしたいの?」
「そ、それは……」

 まさか具体的に問われるとは思わず、彼女の質問にたじろいだ。
 侯爵令嬢なのだから、見ず知らずの子どもなんてすぐに放って行ってしまうだろうと思ったのに。

 このまま彼女にくっついていられたら、月光露を集められない。せっかく集めた分も、さっきこぼしてしまったから、こうしている時間ももったいない。
 焦る私をブルックリー嬢は黙ってじっと待っている。

 私は腹をくくった。

「お花のしずくを集めないといけないの」
「お花のしずく? ……ああ、バラの花びらについた露のことかしら?」

 バカなことを言わないで!と頭ごなしに叱られなかったことにほっとしつつ、コクンと頭を縦にした。
 ブルックリー嬢が私の手元を見る。

「その手に持っている瓶に集めるつもりなのかしら?」

 私はごそごそとスカートの中からもうひとつ小瓶を出した。

「ふたつね。わかったわ。私も手伝いましょう」
「え! お嬢様が⁉」

 心底驚いたせいで声がひっくり返ってしまった。まさか手伝うと言い出すなんて、夢にも思わなかった。

「ええ。それを集め終われば帰るのでしょう? それならひとりでやるよりふたりのほうが早くできますわ」
「ありがとう……ございます……」

 ぎこちなくお礼を返すと、ブルックリー嬢がにこりと笑顔を浮かべる。

「どういたしまして。私のことはカリーナでいいわよ、ロゼ」

 パチリとウィンクを飛ばされて、思わずぽかんとした。

 ちょっと……いえ、かなり変わったご令嬢かもしれない。

 最初に会ったときの不機嫌で冷たい雰囲気とはまったく違う、親しみあふれる彼女の態度に戸惑いながら思う。高貴な血筋のお嬢様への印象が覆されそうだ。

「ロゼ、何をしているの? ぼうっとしていてはいけませんわよ。どんどんやりましょう」
「は、はい!」

 そうしてなぜか私は、カリーナ様とふたりで月光露を集めることとなった。

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