黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
ひとりよりもふたりのほうが圧倒的に早い。
ひとりのときの半分ほどの時間で、小瓶がいっぱいになった。これならなんとか夜のうちにオディリアのところへ戻れそうだ。
「カリーナ様、ありがとうございました」
ふたつの小瓶を両手に握りしめながらお礼を言う。彼女のおかげで時間内に月光露を集めることができた。
用が済んだのなら送っていくと言われ、さすがにここまで手伝ってもらいながらそれを固辞することもできず、宮殿まで一緒に行ってもらうことにした。
来るときはひとりだった道をふたりで戻りながら、ふと疑問に思っていたことを口にする。
「カリーナ様はどうしてそんなに小さな子のお相手がお上手なのですか?」
多くの人にかしずかれて過ごしてきたはずの侯爵令嬢とは思えないほど、世話を焼くのに慣れている感じがする。
月光露を集めている間、彼女は私が困っているとすぐにやってきて手を差し伸べてくれた。それだけではなく、『寒くない?』と言って自分のストールも貸してくれた。
彼女は私を見て目をしばたたいた後、ふふっと笑った。
「ロゼってばおもしろい子ね。まるで自分は大人だとでもいうようなことを言いますのね」
「え、あ……いえ、そんなことは」
鋭い指摘についおろおろしてしまう。
「そういうところはやっぱり子どもね」
カリーナ様はクスクスと笑い声を立てた後、年の離れた双子の弟妹(きょうだい)がいると教えてくれた。
高齢で双子を産んだお母様は体調を崩しがちになり、カリーナ様が乳母と一緒に双子の世話をしてきたそうだ。
なるほど、だからなのかと腑に落ちた。
カリーナ様のように優しくてしっかりした女性こそ、皇后になるべきだったのかもしれない。そのほうが陛下も侯爵家の後ろ盾を得られたはずだ。
陛下だってカリーナ様と一緒にいたら、きっと彼女のことを好きになるはずだ。こんなに素敵な女性なのだから。
「カリーナ様が皇后になるべきだったかもしれません」
口に出した途端、胸が引き絞られるように痛んだ。