黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「嫌ですわ」
さっきとは打って変わった不機嫌な声が降ってきた。驚いて振り仰ぐと、怖いくらい真剣な横顔がある。
「わたくし、皇太子殿下に嫁がずに済んだことに心底安堵しておりますの」
「どうして」
「心に決めた人がおります」
ドクンと心臓が不穏な音を立てた。
「あの方以外に嫁ぐ未来なんて考えられません。もしだめなら修道院に入る心構えはできています」
「修道院なんて、そんな……」
修道女も神に仕える大切な仕事ではあるけれど、カリーナ様のように知性や品性、血筋まですべてを兼ね備えた女性が一生独り身なのはもったいなく感じる。
彼女はふっと笑みを消し、空を見上げた。
「あの方のためならどんなことだってできますわ」
満月を背にした彼女の笑顔が、怖いくらいにうつくしい。
宮殿にたどり着き、回廊の角にはバルコニーにつながる大木の枝葉が見えている。
「ロゼ、今宵わたくしに会ったことは内緒にしておいてくださいませ」
口もとに人差し指を立てたカリーナ様の顔は、一見微笑んでいるように見えるが、目の奥は笑っていない。なにか人に知られてはならないことがあるのだろう。
私が短く「はい」と答えると、彼女は私に背を向け去っていった。
さっきとは打って変わった不機嫌な声が降ってきた。驚いて振り仰ぐと、怖いくらい真剣な横顔がある。
「わたくし、皇太子殿下に嫁がずに済んだことに心底安堵しておりますの」
「どうして」
「心に決めた人がおります」
ドクンと心臓が不穏な音を立てた。
「あの方以外に嫁ぐ未来なんて考えられません。もしだめなら修道院に入る心構えはできています」
「修道院なんて、そんな……」
修道女も神に仕える大切な仕事ではあるけれど、カリーナ様のように知性や品性、血筋まですべてを兼ね備えた女性が一生独り身なのはもったいなく感じる。
彼女はふっと笑みを消し、空を見上げた。
「あの方のためならどんなことだってできますわ」
満月を背にした彼女の笑顔が、怖いくらいにうつくしい。
宮殿にたどり着き、回廊の角にはバルコニーにつながる大木の枝葉が見えている。
「ロゼ、今宵わたくしに会ったことは内緒にしておいてくださいませ」
口もとに人差し指を立てたカリーナ様の顔は、一見微笑んでいるように見えるが、目の奥は笑っていない。なにか人に知られてはならないことがあるのだろう。
私が短く「はい」と答えると、彼女は私に背を向け去っていった。