黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
 彼女の『心に決めた方』というのはやはり陛下のことだろうか。
 父親のブルックリー侯爵が言っていたように、彼女も第二妃になりたいのかもしれない。もしかしたら皇后の座まで?
 
 一瞬浮かんだことに頭を振る。ロゼに対して優しかった彼女が、私に毒を盛ったなんて考えたくない。
 けれど、彼女がなぜこんな夜更けにバラ園にいたのか、という疑問は残っている。

 ひとまず今はカリーナ様のことは置いておくことにする。というより考えている余裕がない。バルコニーに戻るには、来たときとは逆にあの大木を登らなければならないのだ。

 木登りに集中し、どうにか木の枝を伝ってバルコニーまでたどり着いた。

 窓から中に入ろうとしたところで、あれ?と思う。きちんと閉めて出たはずなのに、ほんの少し窓が開いている。

 急いでいたから、閉めたつもりで閉めきれていなかったのかしら?

 音を立てないよう気をつけながら中に入り、今度はしっかり窓を閉めた。

 一刻も早くオディリアに月光露を飲ませたい。
 はやる気持ちを抑えきれず、小走りで寝室の一番奥にあるベッドへ向かう。天蓋をめくってベッドへとよじ登った。

 眠るオディリアの首の下に手を入れて、頭を少し持ち上げる。思いのほか重くて苦労しながらどうにかクッションを敷くことができた。
 ポケットから小瓶を取り出し、ふたを開けて口もとに持っていく。

「目覚めて。お願い」

 祈るようにつぶやいて小瓶を傾けようとしたとき、後ろから反対の腕を勢いよく引っ張られた。

「きゃあっ!」

 驚いて悲鳴を上げたと同時に、手から小瓶が飛び出た。勢いでベッドの下へゴトンと落ちる。

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