黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
 陛下は別々の場所でのびている男達を、鋭い目つきで睨んだ。

「やっぱりこいつらを八つ裂きにしてからにしよう」
「へ、へーかっ」

 金色の瞳が鋭く細めて殺気を放っている。このままだと本当に男達を殺してしまいそうだ。罪は公に処すべきだし、そもそも私の襟を開いたくらいで人が殺されるなんて後味が悪すぎる。

「皇后様は大事ありません! それより早くここから出ましょう!」

 陛下はふうと大きく息をつくと、私にうなずいてみせてからオディリアの体を抱き上げた。

「そうはさせないわ」

 後ろから声がするや否や腕をつかまれ、喉元に固く冷たいものが当てられた。視線だけ下にやると白く光る刃が見えて、喉がヒュッと音を立てる。

「ロゼ!」
「動かないで! 少しでも動けば、この子の首が飛ぶわよ」
「エルマ、自分が何をしているのかわかっているのか」
「わからぬような愚か者だとでも?」
「わかっているほうがよほど愚かだな」

 陛下はエルマの挑発に冷静に答えているけれど、目には一瞬の隙も見逃すまいという強い意志がこもっている。ふたりの会話をただ黙って聞いていることしかできない自分が歯がゆい。

 私が自力でどうにか逃げ出せれば……。

 首すじにはピタリと短剣が当てられていて身動きが取れない。少しでもこの刃が動いたら、一瞬で血管を突き破るだろう。想像するだけで今にもへたり込みそうになる。

「あらまあ、震えて。まだ幼いのにこんなことに巻き込まれてかわいそうにねえ」

 エルマが楽しそうに憐れみの言葉をかけられて、腹の底からもやもやが込み上げる。

 どうしてこんなことをするの⁉ 私が何か嫌なことをしたのなら、私に言えばよかったじゃない。子どもを人質に取って陛下を脅すなんてどうかしている。

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