【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。
クッションに顔をうずめたまま、しばらく黙っていた涼介は、ついに息が苦しくなったのか、ふうっと小さく息を漏らして顔を上げた。

乱れた前髪の隙間から、美香奈をじっと見つめる視線は、どこか挑発的で、そして意味ありげ。

「……そんな目で見ないでよ」と美香奈は思わず口元をゆるめ、小さく笑った。

すると涼介が、ふいにぽつりと呟く。

「……キスしてくれたら、教えてあげるよ」

美香奈は一瞬きょとんとしたあと、笑いながら「いいよ」と答え、そっと涼介の頬にちゅっと軽く口づけを落とした。

けれど、涼介はまだ物足りなさそうに唇を少し尖らせて、

「唇にして」

と静かに、けれど確かに求めてきた。

美香奈はふふっと笑いながら、今度は正面から顔を寄せ、涼介の唇に優しく口づける。
そのキスはあっさりとしたものだったけれど、確かに心まで届くような温もりを持っていた。

唇を離すと、美香奈は涼介の顔をまじまじと見つめた。
(……キャラ崩壊、著しいな)
心の中でそう呟きながら、微笑を浮かべる。

(キスで許してくれるなんて、ほんとちょろい)

でも、そんなちょろくて可愛い涼介が、たまらなく愛しい。
そう思いながら、美香奈はもう一度、いたずらっぽい目で涼介の横顔を見つめていた。
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