【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。
数日後の夜、美香奈はいつものように涼介の部屋でソファに座り、軽く髪をまとめ直しながら、ふと切り出した。

「ねえ、涼介くん。ちょっと聞いてもいい?」

「ん?」と、涼介はテレビをぼんやり眺めたまま返事をする。

「美咲にね、この前話してた長谷川さん紹介してって言われたの。だから、長谷川さんに了承とってからでいいんだけど、連絡先、私に教えてくれない?」

その瞬間、涼介の眉がピクリと動いた。
そして、ソファに深く腰掛け直しながら、ぽつりとひと言。

「……嫌だ」

美香奈は一瞬、耳を疑って涼介の顔を見つめた。

「……なんで?」

「なんでも」

そう言って、視線を逸らす。表情は曖昧で、心の内を隠すような顔。
その雰囲気に、美香奈の中にふと湧き上がった疑念があった。

(もしかして……私が長谷川さんと直接やり取りするの、嫌なのかな?)

そう思いながら、美香奈は少し首を傾げて探るように尋ねる。

「ねえ、何か理由があるの?ちゃんと聞かせてくれたら、無理にお願いしないよ?」

涼介は無言のまま、ソファで足を組み直し、背もたれに身体を預けた。
それでも目を合わせようとせず、「……別に」とだけ、低く呟く。

その様子に、美香奈は確信を得たように、ふっと笑って言う。

「ふふ、妬いてるのね」

その瞬間、涼介はソファに置いてあったクッションをバシッと掴み、そのままギュッと自分の顔に押し当てた。
耳までほんのり赤く染まっているのが、クッション越しでも分かる。

「……もう、涼介くんってば、可愛いんだから」

美香奈はくすくすと笑いながら、隣に座っている涼介の肩に優しく寄り添った。
それ以上は言わずに、ただその不器用な独占欲を、心の中で嬉しく噛みしめながら。
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