【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。
ふたりの視線が静かに重なり、言葉以上の“約束”が交わされたあと。

美香奈の回復を待って、婚姻届を提出しよう。
それから周囲への報告も、ちゃんとふたりで。

そう提案したのは涼介で、
美香奈は小さく頷きながらその言葉を胸に刻んだ。

ソファに寄りかかりながら、たくさんの気持ちを吐き出して――
美香奈は、ほうっと一息ついた。

どこか力が抜けて、ぼんやりとした瞳。

涼介がそっと声をかける。

「……ちょっと疲れたね。
お水、飲んで……一旦、ベッドで横になろうか」

美香奈は、小さな声で「……うん」とだけ答える。

涼介はキッチンから水を持ってきて、
コップを差し出すと、美香奈はおとなしく受け取って飲んだ。

「はい」と手を差し出す涼介。

ところが――
美香奈はその手を、なかなか取ろうとしない。

ふと顔を上げると、
美香奈はほんのり赤らんだ頬で、上目遣いに言った。

「……さっきみたいに……抱っこ、してくれないの?」

その言葉に、涼介は思わず吹き出しそうになりながらも、
どこか子どもを見るような眼差しで、優しく微笑んだ。

「……わかったよ」

そして、軽やかに――美香奈を抱き上げる。

「もう慣れてきたかもね、この抱き方」

美香奈は少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに顔を寄せた。

寝室に着くと、涼介はベッドに美香奈をそっとおろし、
布団と毛布を整えてかけてやる。

美香奈は、まどろむような声でぽつりとこぼした。

「……ひとりにしないで……」

涼介は柔らかく答える。

「うん。……ちょっとだけ、ゾウさん取りに行ってくるから」

そう言って、くるりと振り返り寝室を後にする。

その瞬間――

(ゾウさん……!)

美香奈の意識が一瞬だけ“はっ”と冴えた。

「……わ、わたし……なに言ってんの……!」

布団の中で顔を両手で覆い、
真っ赤になりながらごろごろと転がる美香奈。

戻ってきた涼介は、それを見て笑いながら言った。

「え……いまさら?」

彼の手には、ちゃんとゾウさん毛布があった。

その笑顔は、からかうようでいて――
やっぱり、心から愛しそうに見つめていた。
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