【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。

この恋、拘束力あり。

体調がすっかり回復したころ――
美香奈は、ワクワクする気持ちを胸の奥にそっと隠しながら、
いつも通りの顔で職場へと復帰していた。

日常に戻ってきたはずなのに、どこか景色が少しだけ明るく見える。
けれどその理由を、誰にも悟られないように……
気づかれたくないようで、でもちょっとだけ気づいてほしいようで――

そんなふうに、胸をふわふわさせながら過ごしていた。

入籍は、1ヶ月後の6月15日。

涼介は迷いなくその日を選び、
すぐに上司へ報告をし、手続きを済ませた。

美香奈も、信頼する真木弁護士にこっそりと報告した。
そのとき、想像以上に自分のことのように喜んでもらえたことに、
美香奈は胸がいっぱいになった。

そして――

あの困難な時期に、共に支えてくれた
美咲と長谷川とは、涼介がさりげなくセッティングしてくれた食事の席で、報告を行った。

美香奈が席に着くと、涼介がタイミングを見計らって話を切り出す。

「……俺たち、来月……入籍します」

一瞬の静寂ののち――

「ちょ、ちょっと待ってよ……! え!? ほんと!? ええええ!!」

と、美咲は椅子ごと飛び上がらんばかりに大興奮。
その様子に、美香奈は顔を赤らめて笑い、
涼介も苦笑しながら「落ち着いて」と小さく突っ込む。

「もうっ……ずーっと思ってたんだから!
神谷さんと美香奈、絶対世界一お似合いって! ほんとにおめでとう!」

両手を握られた美香奈は、うれしさと照れくささでいっぱいになる。

一方、長谷川はグラスを片手に、やれやれと笑いながら、

「また先越された〜……あーあ。
でも、ほんとに、よかったな。心から、おめでとう」

と、やさしい声で祝福してくれた。

そして――意外にも、誰よりも悩んでいたのは涼介だった。

入籍のことはすでに上司には報告し、許可も得ていたのに、
なぜか数日間、他の署員たちへの報告をぐずぐずと引き延ばしていた。

その理由はというと――

「……いや、ほら……なんかさ……
結婚報告なんかしたら、俺……ニヤつくじゃん……?」

小さく漏らしたその言葉に、
美香奈は呆れ顔で笑ってしまった。

「……なにそれ……くだらないなあ……でも、あなたらしい」

自分のキャラが崩れるのが恥ずかしいなんて――
そんな涼介が、いとおしくてたまらなかった。
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