最期の晩餐
 楠木さんの噛み出し食の成功(むせはしてたけど、成功と言っていいでしょう)を見届け、今度は自分の問題の解決にいざ出発。

 隼人のアパートに向かう途中でスーパーに寄り、豚バラブロックを購入。隼人の部屋で、豚の角煮を作ろうと思ったからだ。隼人のお母さんの味の前では、嘘も酷いことも言えないだろうと考えたから。こんなことに隼人のお母さんの豚の角煮を使う私は、浮気をされても仕方のない最低女だ。でも、これ以上傷つきたくない。

 買い物袋を肩に掛け、隼人のアパートまで歩く。

「……え」

 まただ。また、隼人と隼人の元カノがアパートの前で抱き合っていた。なんかもう、話し合うだけ無駄な気がした。何も話したくなくなった。

「…………」

 無言でふたりに近づき、

「…………」

 無言で豚バラブロックを隼人に押し付け、

「…………」

 無言で立ち去ろうとする私の手頸を、

「待って、奈々未‼ 話聞いて‼」

 隼人が掴んだ。

「…………」

 その手を無言で振り払う。

「待ってって‼ お願いだから、話しよう⁉」

 一昨日は追いかけても来なかったくせに、今日は食い下がる隼人。さすがに追わねばマズイと判断したのだろう。
< 104 / 155 >

この作品をシェア

pagetop