最期の晩餐
「そんなことはどうでもいいよ。具合が悪いなら、帰りなよ? 無理しなくていいからね」

 ギスギスしたばかりだというのに、私を気遣ってトイレに留まる美知さん。

「……帰れないです。便器から離れられないです。……美知さん、仕事に戻ってください。盛大に下しているので、水流音で誤魔化しきれない生々しい音と、大砲放ったかのような爆音がお尻の穴から鳴ってしまいます。いくら友だちと言えど、聞かれたくない……」

 美知さんの優しさに感動しつつも、美知さんがここにいると思い切り出せない。

「……友だち。そうだよね、ごめんごめん。じゃあ、戻るわ。奈々未は急がなくていいからね。ゆっくりおいで」

 トイレの個室のドアの向こう側で「フフッ」と漏らす美知さんの声が聞こえた。

 自分のお腹とは大戦争を繰り広げているが、大事な友だちとは仲直りが出来たようだ。

「早くお前とも和解したいよ」

 半泣きになりながら、お腹を撫でる。

 結局、二波では収まらず、第三波で体内の水分を出し切り、トイレを後にした。

 脱水症状でフラつきながらも、夕食作りの手伝いをしようと調理場へ歩く。

「ちょっと‼ 大丈夫⁉」

 調理場へ入った途端によろめいた私を、森山さんが抱きとめた。
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