最期の晩餐
「時間が経ってから体調崩す人だっているだろうよ。そんなの、個人差があるに決まってるじゃねぇか‼」

 ファミリーキッチンのアイスを片付けようとしている林田さんは、当然夕食作りを始める気はなく、見る限り作業が滞っていた。これはマズイ。

「変な優しさなんか出さなきゃ良かった。チョコバナナアイスなんか作らなきゃ良かったわ」

 食中毒だと思い込んだ林田さんは、終いに私への親切を後悔し始めた。

「私への心遣いを後悔されたら、二次災害で私まで傷つくでしょうが‼ ただでさえ傷心でお腹もぶっ壊れてるのに、傷口に塩を塗り込むようなことを言わないでくださいよ‼」 

【傷つく】などと言っておきながら、落ち込むどころかブチ切れ、ヨロヨロと歩きながら林田さんに近づく。

 今日は泣いたり怒ったり、本当に忙しい日だ。

「林田さん、調理器具の洗浄・消毒はバッチリですよね?」

 そして、林田さんに質問攻めを開始。

「当たり前だろ‼」

「原材料は全て加熱処理されてますよね⁉」

「当然‼」

「卵は? 生卵使いました?」

「アレルギーの人も食べれるように、全部のアイスに卵は使ってない‼」

「アイスは何度で保存してました?」

「いつもちゃんとマイナス十八度以下で冷凍保存してるわ‼ 基本だろうが‼」

「それなら、菌の繁殖は有り得ない。仮に私が食中毒を起こしていたとしても、アイスが原因じゃない。私がここで食べたものはアイスのみ。だから、腹痛の原因が食べ物だとしたら、ここにくるまでに食べた何か」

 人差し指を立てながら、アイスは安全であることを林田さんに懇々と説明する。
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