最期の晩餐
「……酷い」

 頑張って働きますって言っている私に、なんて酷い言い方なんだと、林田さんを睨むと、

「【体調を押して働く健気な私】なんて美学は、とうの昔に滅びてるのよ。【体調の悪い自分に気を遣わせないように帰りまーす】が、現代の常識よ」

 森山さんが「奈々未ちゃん、ちょっと古いわよ」と、私を宥めた。イヤ、小馬鹿にされたのか?

「現代の常識、ドライすぎる。人間味という味付けはどこに消えてしまったの……」

 イイ子ちゃんアピールの失敗に打ち拉がれている私に、

「グダグダ言ってないで、荷物を纏めて早く帰れ」

 林田さんからの撤退命令が再度飛ぶ。

「何、その退去勧告みたいな言い方―‼」

 ひとりで立っていられないくせに、林田さんに刃向うと、

「奈々未、ハウス」

 美知さんには、美知さんの愛犬の豆太と同じ接し方をされ、

「お元気で」

 森山さんには、今生の別れかのような挨拶をされた。

「帰ればいいんでしょ⁉ 帰れば‼ 帰りますよ、もう‼」

 三人の雑な扱いに、ほっぺたをパンパンに膨らませた。

 本当はプンスカプンスカしながら、乱暴な歩き方でもして『怒ってますよ、私は』オーラを発しながら帰りたいところだが、如何せん身体は怠いのに足はフワフワして踏ん張りが利かないよく分からないコンディションの為、壁に寄り掛かり、手すりを頼りに更衣室へとヨボヨボ歩く。
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