最期の晩餐
 スマホで電子決済をして、タクシーを降りる。一瞬でお会計が出来る電子決済の有り難さに今更ながら感謝。開発した人、誰か分かりませんが、本当にありがとうございます。

お腹を抱えながら、いざクリニックの中へ。フラフラだったはずなのに、漏らしかけると途端に足に力が入る人体の不思議。しかし、

「……お腹、千切れる……」

 一歩入口に入った途端に、無事にクリニックに辿り着けた安堵からか、また身体中の力が抜けて倒れ込んでしまった。

「大丈夫ですか⁉」

 受付にいた女の子が駆け寄ってきた。

「……あ、あの……」

 鞄の中に右手を突っ込み、ガサゴソと粗雑に掻きまわしてカードケースを探し当てると、

「ほ……保険証です。初診です。……トイレはどこでしょうか? 自分の番がくるまでトイレにいても良いですか……?」

 お腹もケツの穴も切羽詰っているというのに、一目散にトイレに行ったがばっかりに、診察の順番が後回しになってしまうのが嫌ながめつい私は、意地で保険証を取り出し、受付の子に渡した。

「分かりました。トイレ、ご案内しますね」

 受付の子がそっと私の身体を支えてくれたので、

「ご迷惑を掛けてしまってすみません。ありがとうございます」

 受付の子に凭れ掛りながら、ゆっくり立ち上がる。
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