【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
「由希くん、手を出して?」

 由希くんは控えめに左の手の甲を差し出してきた。指輪を静かに丁寧に由希くんの薬指にはめる。わずかに触れた由希くんの温かい指の温もりが、じっとりと俺の手に伝わる。

「律くん、僕の手、汗ばんでてごめん。ずっと緊張してて……」
「大丈夫だよ。俺も今、手が震えているし」 

由希くんは色々な角度から今はめた指輪をうっとりさせながら見つめた。角度によっては光の反射でキラキラと輝く指輪。

「律くんにはめてもらった指輪だ! 嬉しいな――」
「こっちこそ、そんな反応してもらえて嬉しい」

 由希くんの声が明るくなり、俺は安堵した。

 目が合うと由希くんは「ふふっ、幸せ!」と、首をかしげながら輝く笑顔まで見せてくれた。由希くんの笑顔を見ると、温かい気持ちが全身に溢れてきて、胸の辺りがキュンと大きな音を立てた。

「由希くん、俺の指輪も、いい?」

 俺は視線をテーブルに置いてある、もうひとつの指輪に向ける。由希くんは指輪を持つと手が震えだした。俺は由希くんに手の甲を上にした左手を差し出した。

「律くん、僕、緊張しすぎで倒れそう」
「大丈夫? 落ち着いてからでいいよ。俺、ずっと待っているから。いつまででも待てるから――」

 そう、由希くんに対してなら、どんなことでもずっと待てる自信がある。
 由希くんが気持ちを俺に伝えるのも、いつまでも待つ気持ちでいた。

 ずっと、俺の隣を開けていられる自信はあった。
 だって、俺が好きなのは、ずっと由希くんだけだから――。

「では、いきますよ」

 由希くんは左手で俺の手を支える。そして指輪を俺の薬指に通した。

――由希くんが、俺の指に指輪を。

 目を閉じて意識を全て薬指に集中させる。喜びをじっくりと噛み締める。そして目を開くと、由希くんを見つめた。

「由希くん、ありがとう」

 人生はまだまだこの先もあるけれど、ゴールに着いたような感覚がした。同時に、幼い時からの由希くんへの気持ちが溢れてきた。

 由希くんからもらった指輪をずっと眺めた。
 見つめていると、今までの由希くんとの思い出が頭の中を駆け巡る。



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