幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの?
「初詣は木田とすんのか?」

焦って選んだ話題がこれだった。

「……どうしてそんなこと聞くの?」

「父ちゃんは明日も仕事だし、オレは一人寂しく寝正月だから、羨ましいと思ってさ」

ははっと笑ってみる。

「私が誰と初詣に行っても、蓮には関係ないでしょう?
それに、蓮なら誘えば喜んで応じてくれる女の子がたくさんいるよね?」

沙菜はそう言うと、オレが次を言う隙もなく、走って帰ってしまった。

暗い気持ちで玄関を閉める。
沙菜のトゲトゲしさに、凹んだ。
仕方ない。全部オレがいけないんだから。
沙菜の信頼を裏切ったのは他でもない自分。

修復は、やっぱり不可能なんだろうか。
男と女として付き合うことができなくても、前のような幼馴染の関係には、もう戻れないんだろうか。

いや、違う…。
幼馴染に戻れないのはオレだ。
今更沙菜を女として見ないようにするなんて無理だ。
全ては、オレが沙菜を異性として意識したのが始まりだったんだから。

大晦日の日、父ちゃんは予定通り日付が変わる前には帰ってきた。
そして、男二人でわびしい年越しをして、次の日は二人とも寝坊。
一応、起きて顔を合わせたとき「あけましておめでとう」という挨拶はしたけど、妙に白々しい。
お互い気を使うこともなく、好きなようにダラダラして、そして、昼食を兼ねて一番近所の神社へ初詣に行き、屋台のヤキソバを食べて、父ちゃんはそのまま仕事へ行った。
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