タイプではありませんが
「山下、顔赤いけどどうしたの?」
「……大丈夫」
「そう。……ならいいけど」
深く問いかけないでいてくれてありがたい。けど、繋いだ手に力を込める星野に、楓は心の中で「くそぅ」と呟く。
こういうところなのだ、結局。
告白してきたのは星野。好きだといってきたのは星野。お試し交際でいいから付き合ってといってきたのも星野。
なのに、楓のほうが翻弄されている気がするのは何故なのか。
普段は名字で呼ぶくせに、家で二人きりになった途端、「楓」と呼んでくることも。
星野が成約を取ってきた時――特に楓が引き継いだ立石の会社から大きな案件をまとめたときは――八つ当たりに近いことを言ったのに黙って楓の長電話に付き合ってくることも。
そして、そういう時は決して謝らない。謝るのは、今までの山下の仕事を侮辱していることになるから、といってただ、楓の気持ちの捌け口でいてくれることも。
一通り愚痴ってスッキリした楓がまた前向きに今の仕事――営業事務の業務――に向き合うと返事をすると電話口でもわかるくらい優しく笑って「頑張れ」と言ってくれることも。
全て嬉しくて、好意的に受け止めている自分がいる。