タイプではありませんが
星野が作ったランチをごちそうになり、彼が片付けをしている間手持ち無沙汰になった楓が本棚を眺めていると、ある一冊に目が留まる。
「あれ?こんなのあったっけ?」
発見したのは営業ノウハウ本に挟まれるようにあったのは公認会計士の本だった。
星野には好きに読んでいい、といわれている。楓はその一冊に手を伸ばした。
パラパラとめくってみると、星野の字で書き込みがしてある。
全然畑違いの内容にちんぷんかんぷんだ。
理解するのが難しい本がなんでこんなところに、と疑問に思う楓の後ろから星野が声を上げた。
「あ!」
振り向いた楓に、星野は顔を赤くしていた。
「見つけちゃった?」
「これ?」
「そっかぁ」
ヘナヘナと、その場にしゃがみこんだ星野に楓は慌てる。
「ごめっ、その……」
「いや、大丈夫」
星野は楓を静止するように片手を前に出した。
「違うんだ」
もう片方の手で口元を抑えながら顔を上げた星野は、耳まで真っ赤になっている。
顔を上げたのはいいが、星野とは微妙に目が合わないし、ため息交じりの息を吐いている。
なんで星野がそんな風になっているのか理由がわからない楓はオロオロするだけだ。
「……見られたくなかった」
「う……ごめん」
「いや、そういうことじゃなくて」
星野はやっと楓と視線を合わせた。
「俺の挫折の証だから……。恥ずかしくて見られたくなかっただけ」
「え?ホッシーが挫折?」
星野が頷かなくても、赤くなった星野の顔が事実だと答えていた。