タイプではありませんが
それでも星野はそれ以上追求せずに楓に話を合わせてくれる。
「タイプじゃなきゃダメなん?」
「……うん。そうじゃなきゃ付き合えない」
心のなかで手を合わせ、それでもキッパリ断る。
断ったつもりだった。
「山下より十五センチは背が高くて肩幅広くてボディビルダーのような逆三角形の体。確かに今の俺は何一つ当てはまってないな」
フラれる度に散々愚痴ってきたから、星野も楓の好みはバッチリ把握している。
「なら身長と肩幅は無理だとして。取り敢えずプロテイン飲んで筋トレして鍛えれば付き合えるってことか」
「違っ!」
「っ!……お、お待たせしましたー。ハンバーグのお客様ー」
「あ、俺です」
ポジティブな星野を否定しようとしたタイミングで店員が料理を運んできた。
楓の言葉にビクッとした様子の店員は星野の前にハンバーグを、楓にはオムライスを提供するとそそくさと去っていった。
水曜日の夜にも関わらず、子連れや学生で賑わっているファミレスの中では楓の声は響かなかったようだ。
「冷める前に食べよう」
カトラリーを差し出す星野につられて、楓はスプーンを手にする。
星野もナイフとフォークを手に取り食べ始めた。
どうも調子が狂う。
仕方なく楓も手を合わせて小声で「いただきます」と呟いてスプーンで黄色い卵で包まれたケチャップライスを掬い上げた。