タイプではありませんが

「俺は仕事に全力投球するのは出来ないのに山下はいつも全力だったやん?覚えてる?若手社員の時、俺が負けたことあるの」
 もちろん覚えていた。
 入社三年目までの若手営業社員対象の年間売上成績で一度だけ楓は星野を上回ったことがあるのだ。
 入社して二年目の成績で。
 一年目の成績が同期の中でダントツ一位の星野ではなく、楓が。
 三年目は僅差で星野が勝ったのだが。

「あれ、めっちゃ悔しかったんだ」
「そうなの?」
 楓は驚いた。その時の星野は悔しがる様子もなく、楓におめでとう、と言ってくれたから。
「うん。めっちゃ悔しかった。きっと同期には負けることないって思っていたし、山下のことなんか正直眼中になかったから」
「……そうですか」
 なんか貶されている気がする。少しだけモヤっとしていたから返事は微妙になった。
 敏感に楓の心中を察した星野は、ごめんと謝る。
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