タイプではありませんが


 そんな楓の気持ちを星野は薄々勘づいているだろう。
 しかし、今度は前のように焦る様子を見せることはなかった。
 ただ、週に一回程、何かしら理由をつけて楓の家に来て他愛もない話をする。
 時に体を重ねるときもあるけれど、楓の負担にならないように気遣ってくれる星野。
「考えすぎるなよ」
 そう声をかけてくれる星野が最近煩わしい。

 会っているときはいいのだ。
 一人になり悩みのループに入ったら、星野のその気遣いすら鬱陶しく思ってしまうのだ。


 それでも考え、どうしょうもないことで悩んでしまう。
 考えたところで結局サラリーマンだ。希望は聞かれるが、辞令が出たら「はい」と言うしかないのに。
 できることと言えば、自己研鑽を積むしかない。
 その努力も結局は雇われの身の上。叶うとは限らない。
 だけど、星野が楽しそうに今の仕事も、そして未来のための勉強も両立している姿を見ると焦ってしまう。
 今まで忙しく働いてきて、ふと余裕が出来たら何も持っていないような。
 謎の焦燥感でますます無駄なことをグルグル考えてしまう。
 そんなことを考えるなら行動すればいいのに、体は楓の思うように動いてくれない。
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