タイプではありませんが

 やっぱり出世させて残したか。男性社員は管理職以上の役職をつけることで異動をさせない。
 入社して五年を過ぎるとあからさまに男女で出世に差が出るのだ、この会社は。
「上場企業で産休育休制度は整っているが、内情はこんなもんだ。古い体制の会社だからな」
「はい」
 わかってはいた。だが、結果を残したら自分も星野のように同じ部署に居続けるのではないか。
 そんな甘い期待をしていたところもある。
 結局会社の体質と病気で駄目だった。
 いや、違う。
 楓自身に今までの慣習を覆すだけの圧倒的な力が足りなかったのだ。

 悔しい。

 そんな楓の気持ちを知ってか知らずか、部長は口を開いた。
「山下、勤めだして何年だ?」
「えっと……四月になったら入社して七年です」
「俺は二十年だ。お前の倍は働いている」
「はい」
「俺だってずっと営業畑で来たわけじゃない。途中で広報になってまた戻ってきた」
「はい」
 入社当初は営業だったがすぐに広報に移ってそれからずっと異動がなかった部長が、畑違いの営業に移ってきたのは有名な話だ。
 ちょうど仕事ができる部長と先輩社員が辞めて、イヤなヤツがのさばってて。
 星野も限界が来ているし、楓も一気に担当が増えて、終電で帰る日々が続いていた。
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