タイプではありませんが


 今の部長が来て、仕事が回るようになってきて
有能だった先輩の仕事の引き継ぎも、無能だったヤツの尻拭いも終わった頃、ブラックだった部内が少しずつまともになって。
 勤務時間が長いから、退職や異動で人が定着せず、一時的に減っていた人員もやっと安定して数字を見込めるようになってきて。
 いつもは課長の後ろに引っ込んでいて、直接話す機会は年何回かの面談の時だけだが、やり手の部長なのだ。

「経験を積んでおけ。十三年後のために。山下が勤続二十年になる頃はいくつだ?」
「四十三歳です」
「ちょうど中堅の歳だ。役職を持って仕事をしていて、上の意見も聞きつつ、後進を育てる立場だ」
 そう……なのか?
 すぐ近くの――異動した四月以降の――未来もイメージできない楓にとっては、十年以上先の働いている自分の姿は想像できない。
 楓の表情から戸惑っているのを感じ取った部長は苦笑する。
「山下の歳ならまだイメージできないかもしれないが、十年経てば色々変わる。仮に数年以内に結婚して子ども産んでも、ずっと独身でも、今よりは格段に女性が働きやすい会社にはなっているだろうよ」
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