タイプではありませんが




 年度最後の土曜日の夕方。
 楓はあるホテルの一階のカフェにいた。
 チェーン店で着飾った姿は浮くかな、と思っていたがホテル内に結婚式会場があるからか、ラフな格好の人に混じって同じような姿のグループもいたため、うまく場に馴染んでいた。
 来週の半ばには星野は係長に昇進して楓は総務に行く。
 だから、今日言うつもりだった。
 今までの関係を終わりにしようと。すべて忘れてくれ、と。



「同じ課で働くのもあと数日だから、いいもんでも食おう」
 星野が予約した店の場所は、ホテルの上階。
なんでこんなところ?と質問しようとした楓は、星野に渡されたフライヤーに載っている企業名を見て納得した。
「さすが出世される人は違うね。……この店の運営、最近取引開始した会社じゃない」
「バレた?」
 カラカラと笑う星野は楓に言った。
「食事代持つからさ、現地調査に付き合ってくれる?山下の目にどう写るのか、意見聞きたいんだ」
 久々にワクワクする誘い。少しだけ胸がズキンと痛んだが、無視して二つ返事で答える。
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