タイプではありませんが
「いいよ、楽しみにしてる」
「よかった。カジュアルな格好でもいいらしいけど、せっかくならドレスアップしたところを見たい」
相変わらず歯の浮くような台詞をサラリという男だ。
周りの社員がギョッとした顔でこちらを振り向く。が、星野と楓を見ると、いつものことか、と納得する。
どこでもそんな言葉を言えるのは一種の才能だ、と楓は感心する。
たとえそれが社内食堂の、それも業務が押して急ぎ足で注文をした昼食をかきこんでいる時だとしても。
「はいはい」
ドキドキを悟られないようにワザとそっけなく答えた楓に星野は微笑んだ。
この目。どうせ私の心情なんかわかっているんでしょ。
目で訴える楓に星野は吹き出した。
楓の機嫌を損ねたら台無しだ、というように、
「じゃ、頼むよ。後で連絡する」
と、早口で言うと残りのカレーをあっという間に平らげる。「ごちそうさま」と短く手を合わせると星野は足早に食堂を後にする。
台風のような星野に楓はため息をつく。
忙しくしている星野とは逆に楓は引継ぎも終わり、少しずつ手隙きになっているというのに。