タイプではありませんが

「結構さ、自信あったんだ。惚れさせる自信」
「……うん」
「山下の好きなタイプは知ってたし」
「ホッシーはタイプじゃないもん」
「体型的には、だろ」
「どういうこと?」
「山下って結構強引な男好きだろ。あと女性扱いされて情に訴えたら流される」
「えっと……」
 何も言えなくなった楓に星野は苦笑する。
「人の頼みをよく引き受けるのに、人に頼むのは苦手で。よく周りを観察しているのに、上手く活用できていなくて。頑固だし」
 褒められているのかいないのか。微妙なことを言ってくる星野に、ますます楓はなんと返したらいいかわからなくなる。
「不器用な子だと思っていたのにさ。営業にかける想いは人一倍強くて。小さい仕事でも手抜かないし、何でも一生懸命だしさ。そのうち成績も伸ばしてくるから焦らされるし」
 楓の上に重ねられた星野の手に力がこもる。
「俺にない情熱で仕事に向き合って。かっこいいな、って思っていたら、プライベートでは、男見る目なくて。あんだけ仕事では観察力あるのに、見た目で男選んで失敗しまくるし」
「……仕方ないでしょ、好みなんだから」
 ははは、と笑った星野は、寂しそうな顔をした。
「俺も山下の好みの見た目だったらな」
 ハッとした楓が何か言う前に、いつもの柔和な表情に戻った星野は、手を離した。

「約束だもんね、今日で全て忘れるよ。今までのこと。その代わり、山下は覚えていてね」
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