タイプではありませんが




 店を出て並んで駅まで歩く二人の間は空いている。
 数ヶ月で縮まった距離がまた元に戻る。
 それだけなのに、楓はとてつもない寂しさに襲われていた。
 それが何なのか。
 わかっていたが口には出さない。出せない。
 ギュッと手に持った紙袋を握りしめる。
 星野から渡された時計だ。

「新しい部署に行く餞別としてプレゼントさせてよ。女物だし、俺の部屋に置いていたら忘れられないから」
 金額も張るものだし、と拒む楓もそう言われると受け取らざるを得ない。
 重いものを受け取った気分になる。
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