タイプではありませんが

 星野の指摘にギクリとする。
 あからさまな楓の反応に星野はハハッと笑う。
「何か新しいことでも始めた?」
 流石鋭い。隠すことでもないか、と楓は口を開いた。
「残業も休日出勤もほぼないから資格の勉強とホットヨガに通ってる」
「習い事かぁ、いいな。プライベートも充実しているんだ」
 よかったよかったと、楓に笑いかけて星野は空になった缶を捨てる。
「また()()で飲もうよ。その時にでも話聞かせて」
 じゃっ、と足早に去っていく星野に楓は慌てて声をかける。
「これ、ありがとう!」
 右手でカフェオレの缶を掲げると、星野も片手を上げて答えた。
 あっという間に姿が見えなくなった星野の背中に、楓はそっとため息をつく。

 普通に応対してくる星野に戸惑っていたのは自分だけ。

 ――忘れてほしい――

 そう願ったのは楓なのに、いざその時になってみると彼の中に自分の姿が残っていないことにモヤモヤする。
 こういうときは、スッキリするに限る。
 楓は携帯を取ると慣れた手付きでホットヨガのアプリを開き、今夜のレッスンを予約するのだった。
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