タイプではありませんが

 営業の時の肩肘を張り、気合入れた格好を思い出すと若気の至り――というか、根本は今も変わっていないけど――うわぁ、と叫びたくなる。
 必死に努力して頑張って結果を残す。休みもなくヒリヒリした中で仕事をするのも、それで楽しかったけど、今は仕事とプライベートのメリハリをつける働き方の良さも知っている。

 視野が狭かったことを思い出して、顔を赤くする楓に星野は囁いた。
「暑気払いで飲みに行こうよ」

 ――ポンッ。 

 タイミングよく小さい音が響き、ドアが開く。
 人の波に合わせて降りた楓に星野は追いかけながら声をかけた。
「また詳細は連絡するわ。……お、おはよう」
 部下なのだろう、声をかけられた星野は楓に手を振りながら自分の部署の方へ歩いていく。
「ちょっと」
 慌てて声をかけたけど、もう楓の言葉は耳に届いていない。
 はぁ、とため息をついた楓は諦めて、総務部の方へ歩いていった。
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