タイプではありませんが




 話していると楽だ。
 そう感じさせる何かが星野との間には確実にある。
 営業部のこと、総務部のこと、プライベートのこと。
 話題はいくつもあるし、一旦話し出すと会話が途切れることはない。
 星野はサングリア、楓はトニックウォーターを追加で頼む。
 まだまだネタは尽きない。
 熱々のガーリックオイルに浸かったマッシュルームを頬張りながら星野の言葉に頷く。
 星野も話の合間に早々に頼んだパエリアを口に運びながら楽しそうに話し続ける。

 入ったときに感じたことは杞憂だった。
 楓もやっと気持ちがリラックスしてきた頃。
 程よく酒も回ってお腹を満たされたタイミングで、急に星野は何か考えるように口を噤んだ。

「ホッシー?」
 恐る恐る声を掛けるが星野は何かを考え込んでいるように顎に手を当て、眉間にシワを寄せたままだ。

 何か迷っているときの顔。
 いや、少し違う。
 わざとそんな顔を演じているような。
 だって、真剣味が足りない。どこかわざとらしい。
 なんでそんなことするの?そんな表情作られたら嫌でも去年のあのことを思い出してしまうのに。

 楓の心の葛藤が聞こえたかのように星野がこっちを見る。
 楓の顔を見据えて、真剣な顔を作って。
 やけに真面目ぶって放った言葉は。

「山下、俺と付き合わん?」
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