タイプではありませんが
あっ、と気付き、楓は再び携帯を取り出した。
受付票のQRコードを読み取る。まだまだ自分の順番は先のようだ。
これまでの通院の経験からどれくらいか予想して目安の時間を伝えた。
『あと一時間はかかりそう。また遅れそうなら連絡するね』
星野からはオッケーとありがとうのスタンプが返ってくる。
時間が読めない中で待つのは意外と苦痛だ。あとどれだけかかるかわかったら上手く時間を使えるだろう。
楓は今度こそ携帯をカバンにしまって、代わりに文庫本を取り出した。
待ち時間が長いからか、待合室の椅子は病院にしてはいい椅子だ。ひとりがけの椅子も多い。
そのうちの一つに座っている楓は、体を背もたれに預ける。
少なくともあと一時間はゆっくり読書が出来る。
社会人になって読むのは専らビジネス書だったが、病院で読むのは小説だ。
昔好きだった作家の本を買い、読む。億劫な通院の中での唯一の楽しみだった。
(今日で読みきれるかな)
残り半分のところで挟んでいた栞のページを開き、楓は物語の中に入っていった。