タイプではありませんが
4.タイプじゃない
最寄り駅まで送る、と言うと楓は固辞したが、星野は無理矢理、乗換駅まで一緒についてくると言い張った。
「ここからならホッシー乗換なしで帰れるのに」
ブチブチ文句を言う楓を促し、星野は歩き出した。
着いてこない楓に星野は傘をさしていない手を差し出す。
「つなぐ?」
「っつ!つながない!!」
思いっきり否定をした楓は、早足で星野を追い抜く。
横を通った時にちらっと見えた、楓の真っ赤な顔。
(全く見込みがないわけじゃなさそうだな)
そのことに少し安心した星野は大股で楓を追いかけた。
身長差はほぼ無いが、歩幅の違いからすぐに楓に追いついて並んで歩く。
楓の最寄り駅には二つ隣の駅から乗ったほうが楽だ。
二駅と言っても大人の足でゆっくり歩いても十五分くらいの距離。
それでも、体調を崩している楓に歩調を合わせると二十分強かかった。
「まだ時間ある?」
駅ナカのカフェを指さして楓を誘う。
「外寒かったから手、冷たくて。コーヒー飲まん?」
あれだけの距離なのに、少しだけ息が上がっている楓を慮っていることは気付かれないように。
ほらっ、と軽く手を触らせる。
「冷たっ!」
ひやりとした温度に楓は星野の手を振り払った。
「山下、あったかいねー。もっと触っていい?」
「いいわけないでしょうよ」
「残念。なら一杯飲もうや」
「……ホッシー、それお酒飲む時の誘い方」
呆れ顔しながらも楓は店の方に向かう。
セルフのお店だから、星野に席取りを頼むと楓はレジ待ちの列に並んだ。
「何飲む?さっき出してもらったからここは払うよ」
どうやら星野の配慮には気付かれなかったようだ。
「ええっと……」
さり気なく触れた手の柔らかさに嬉しさを感じつつ、星野は楓の後を追った。