タイプではありませんが
ブーーー。
ブザーの音が鳴り、辺りが暗くなると、隣の席の星野の気配が濃くなった。
あぁ、失敗した。
楓は映画の始めの方から、今日ここに来たことを後悔し始めていた。
見たかった映画だ。前評判通り、ストーリーも悪くない。
だが、隣にいる彼のせいで集中できない。
ことごとく、タイミングが一緒なのだ。
ストーリーに声にならないため息をもらしたり、LLサイズのポップコーンに同じタイミングで手を入れたり。
恋人同士なら嬉しい共通点。だけど、想いは星野から楓の一方通行なのだ。
楓は星野の気持ちに答えられない。心がときめかない。きっとこの先も……。
――本当に?――
チラッと浮かんだ心の声は全力で気づかないフリをする。
星野が決めた三ヶ月もあと半分だ。でも本当に三ヶ月もいるのだろうか。今日決断しても、一ヶ月半後返事をしても答えは同じなのに。
――本当に答えは同じ?――
再び浮かぶ問いかけ。それも華麗にスルーすると楓はちらっと星野の方を盗み見る。と、彼と目があった。
見つめ合っているとさっきの心の呟きが浮かんでくる。
(き、気まずい……)
顔に出ていたのだろうか。星野は少しだけ寂しそうに眉を寄せたのだった。
その視線から逃れるように、楓は慌ててスクリーンの方を見る。
見たかった映画なのに、結局ストーリーは頭に入ってこなかった。