タイプではありませんが




 映画の後、カフェでお茶して夕飯を食べて。
 そして当たり前のように星野は楓の最寄り駅まで送っていった。
 映画が日に一本、それも夕方にしか上映していなかったからか、最寄り駅に着いたときには既に二十三時を回っていた。
「……した?……やました?」
「あ、ごめん。なぁに?」
 映画館を出てからどこかうわの空の楓。先程から何度もこうして声をかけられてハッとして謝ることが続いている。
 いつの間にか星野も改札を出ていた。
 いつもなら、改札の中で別れるのに。
「家まで送るよ」
「大丈夫だよ」
「ダメだ。ボーッとしてるやん。時間も遅いし、危ないから」
 星野はゆっくりと首を振る。
「俺に送られるか、タクシーで帰るかどっちがいい?」
「一人で……」
 眉間にシワを寄せる星野に楓は口をつぐんだ。これは、怒っている。
「一人で帰る、なんて言わないよな」
 口元に笑みをたたえながらも、目は怒っている。今までで一回しかない、星野の顔。

 楓はため息をついた。
 星野の終電の時間もあるから迷う時間はそんなにない。
 十分もかからない距離だからタクシーを使うのは気が引ける。
 と、すると手段は一つ。
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