タイプではありませんが


「……家の近くのコンビニまででいいから」
「んー、とりあえずわかった。じゃあ早く行こう」
 星野は少しだけ不服そうな顔をしたが、楓の家の方角に歩き出した。
 星野は楓の家を知っているから、歩みに迷いがない。なぜ知っているのかというと、楓が千葉の実家から今の家に引っ越した時に同期数人に手伝ってもらったのだ。
 引っ越しは業者に頼んでいたから滞りなく終わったのだが、初めてする一人暮らしだから右も左もわからない楓に、既に単身住まいに慣れていた同期が生活に必要な細々したものの買い出しに付き合ってくれたのだ。
 その中の一人に星野がいた。家の場所は知っているのは当たり前。
 だから今まで家まで送る、と言われていたのを断っていたのも家を知られるのが嫌だったわけではない。

 ただ、慣れていないのだ。男性に女の子扱いされることに。


 身長も高く、しっかりしているように見られる楓にとって、彼氏にもされたことがない女の子扱い。
 恋人でも無い星野にされるとどうも落ち着かない。
 星野は自分がしたいだけだから、と答えるだろうが。

 星野から見て楓は「女」であると自覚させられる。
 楓にとって星野は「男」ではないのに。

 そんなことを考えながら歩いていると結局、近くのコンビニを通り過ぎ、家の前まで送ってもらうことになっていた。
「ホッシー、ごめんね。遅いのにありがとう」
「ええよ」
 ニコッと笑った星野だが、なかなかその場から動こうとしなかった。
「ホッシー、電車なくなるよ?」
「うん」
 そう言っても足を動かそうとしない星野に訝しげな視線を送る。
< 30 / 166 >

この作品をシェア

pagetop