タイプではありませんが
「あのさ、山下」
「うん?」
「俺、今日誕生日だったんだ」
「え?早く言ってよ!そしたらお祝いしたのに」
流石に同期でも誕生日までは知らない。楓は本気で驚いた。
「二十九だよね、おめでとう」
確か星野は大学時に一年休学して長期留学していたから年は一つ上だ。楓は自分より一つ早く歳を重ねた星野に何か渡すもの、お菓子でもないかカバンの中を漁る。こういうときに限って、いつも欠かさず入っているチョコもあめもない。
カバンをひっくり返す勢いの楓を止めて、星野は言った。
「でさ、プレゼント欲しいんだ」
「いいよ、何がいい?」
顔を上げた楓に星野の顔が近づいてくる。
ゆっくりと。
「嫌なら避けて」
あと十センチで唇が触れ合うところで星野は一旦止まる。
しばらくその状態で見つめ合う。いや、時間にしては一秒か二秒だろう。
でも充分避けられるくらいの時間。
その間に楓の頭は色々なことが飛び交う。
これが誕生日プレゼントでいいの? ってか嫌ならって……。別にホッシーのこと嫌ではない。けど好きでもないし。ってかどうすれば……。
ぐるぐる混乱している様子の楓とは反対に星野は相好を崩した。
「ありがとう」
囁くような礼と共に柔らかいものが楓の口に重なった。