タイプではありませんが
キスを受け入れたことは失敗だった。
本当に失敗した。
星野が主導権を握ったらこうなるってわかっていたのに。
このままなら、星野の作戦通り三ヶ月の間に付き合うことになってしまう。
それだけは阻止したい楓は必死だ。
いつもの落ち着いたカフェは混んでいたから、普段行かないファーストフード店に入ったことが幸いだ。
言い合っていてもそれ以上に店内がざわついているからか、二人の会話に耳を傾けるものはいない。
お願い、やだ、の応酬が続く。
「わかった」
笑いをこらえるように星野がいった。
楓はなぜ彼がそんな表情をしているかわからなかったが、納得してくれたんだ、と喜んだのもつかの間。
次のセリフでその喜びがパニックに変わる。
星野は楓の耳元に唇を近づけてささやいた。
「そんなに言うってことはキス以上の誕生日プレゼントくれるんだろう。楽しみにしているから」
「!?」
ガタンと音を立てて椅子から立ち上がった楓を周りの人が振り返る。
咎めるような視線に耳を押さえながら楓は会釈をして再び座った。
目の前の男は余裕の笑みで紙コップのコーヒーを啜っている。
今まで耳元で星野の声を聞いたことは何度もあるのに、告白されたことと囁かれた内容でこうも意識が変わるのか。
耳が熱い。きっと顔も真っ赤だろう。
「やっと俺も山下の眼中に入ったみたいでよかった」
「……勘弁して」
「何について?」
「……耳元で声出すの」
「今までもしていただろう。俺に興味なかったから山下が気にかけてなかっただけ」
星野の言うことは尤もだ。だけど、心臓に悪い。
「……たらし」
悔し紛れに楓が言った言葉。
少しだけ星野が息を飲み、それでも普段通り笑って簡単にいなす。
「なびいてくれるなら、女たらしでも顔だけの男と言われようとなんでもいいよ」