タイプではありませんが
「「星野くんは、誑かしているんじゃなくて人の心の動きを読み取るのが上手いんです。そしてそれをしっかり仕事に落とし込んでいる。見習うことはあっても揶揄することじゃないと思います」って」
「そんなこと言ったっけ? ってか、長っ! ホッシーよく覚えてるねー」
「一番しんどい時期だったから、一言一句染みたからね。そりゃあ丸暗記するよ」
サラリと言いのけ、星野は楓の目を見る。
おぼろげながら記憶が蘇る。そうだ、あの頃の星野は今と違っていた。
若いから、イケメンだから、簡単に数字が取れていたと揶揄されていたけど。それだけで数字が取れるほど甘いわけじゃない。
それでもそんな皮肉を嗜める上司はいなかったから、当時の課内の雰囲気は最悪だったのだ。
優秀な営業の先輩が引き抜きで辞めて、できる部長が家庭の事情で急に辞めて。
新しい人員が配置されるまでの僅かかの間で一部の人間が陰口のみならず、面と向かって妬みをぶつけることができるくらいには。
いつもの星野なら気にもかけない嫉妬の言葉だったのだが、信頼していたアドバイザーの二人がいなくなり、大きな壁にぶつかっていたのだ。
尊敬していたエースと部長に続き、星野まで辞めてしまうのかと思うくらい、あの頃の彼はギリギリのところだった。
仲間の励ましや応援が真っ直ぐ届かないくらいには。
「あんま覚えていないけど、当時の私はありのまま言っただけだよ。……きっと」
「だから響いたんだよ。山下は思ってもいないことを言う人間じゃないし。それに、営業として山下のこと凄いなって見ていたから純粋に嬉しかったんだ」
「私のことを?」
「そそ。山下ってめちゃくちゃ取引先のこと研究するじゃん。その企業のファンか、ってくらい知ろうとする。即仕事にならないこともあるけど、同業他社に移ったときに付いてきてくれるのは俺じゃなくて山下の方だから」
悔しいけど、と加えられた言葉に楓は嬉しくなる。