タイプではありませんが


「あんたさー、彼氏とかいないの?早く結婚しないとあっという間に三十歳だよ?」
「いないし、ほっといてよ」
「勉強だけ出来てもねー。(さくら)みたいに早めに子ども産んどいたほうがいいわよ」
 十八歳で授かり婚した妹のことを当初はかなりくさしていたが、十年近く経つと真逆のことを言い出す母に楓は苦笑いするしかない。
「わかったわかった」
 話半分でしか聞いてない楓に母は口を尖らせる。
「だからあんたは……。(てつ)くんも結婚したんだって。こないだお母さんとバッタリ会ってさー」
 親っていうのは、古い記憶を引っ張り出すのがうまい。
 高校の時の元カレの話を聞いて、今更誰も喜ばないのに。
「ふーん、そうなの」
 関心がない楓の返事に母はダメ押しの一言を発する。
「あんた、哲くんみたいな人、二度と現れないよ。……なんで別れたかねぇ」
 悪い人ではない。が、娘、特に楓には遠慮がない。無神経と言っていいほどに。
 いつものことだと、少しだけ痛む胸に気付かないふりをして笑って受け流す楓。
 聞き流せる技は身に付けている。が、あとでダメージはくる。どうかそれ以上言わないで、という楓の願いは母には届かない。
 更にいい募ろうとしたタイミングで玄関が開く音がした。
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