タイプではありませんが
「好きなヤツでもできたか?」
柊がからかってくる。こういうところは、兄も母の血を受け継いでいる。いや、この地域特有の会話のきっかけ作りだ。千葉といっても楓の故郷はだいぶ田舎のほうだ。周りは自分のことを小さい頃から知っている。
先程、母が元カレの哲の結婚を知っていたように、井戸端会議で、飲み会ですぐにプライベートは知れ渡る。
そこが、この地域のいいところだ。みんなが周りのことを気にかけて助け合える。
分かってはいるが、これが苦手で上京した楓はつい構えてしまう。
「……ああ、ごめん。お前はこれ苦手だったな」
黙る楓に柊はあっさりと詫びる。逃げ道を用意してくれる兄に、楓は助かったというようにため息をついた。
「あんま気にするなよ。オフクロも悪気はない」
「わかっている」
わかっているのだ。だが、苦手なのだ。深いところまで自分をさらけ出すのも、周りに踏み込まれるのも。
ふと、楓は気づいた。
星野が自然に踏み込んで来ていること。そのことに楓自身は嫌な思いをしていないこと。
なぜだろう、と思い浮かんだ問いは、無理矢理打ち消して、家の中へ入る柊の背中を追いかけた。