タイプではありませんが
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みんなで年越しそばと寿司で晩御飯にしたあと、疲れたという子どもたちと兄嫁を先にホテルに送った楓は、少しだけ離れたところまで車を走らせると、路肩に停めた。
楓も家族として保険がきく車は父名義の軽自動車しかない。まだ四歳と六歳の子どもだ。チャイルドシートとジュニアシートをつけると大人は楓以外、一人しか乗れない。
まだ、両親と妹家族と酒盛りをしている兄は後から送ることにした。
ホテルの前で手を振る子どもたちに手を振り返して、楓は実家に帰る。
一人になった車内で楓は深くため息をついた。
ずっと知っていた地元なのに、一年に一度しか帰らない楓には年々違う町に見えてくる。
知らない間に馴染みの店が潰れ、新しい店ができる。小学校や中学校は変わらないままなのに、記憶にある景色と今見ているものが重ならない。
少しずつこの町の空気が自分の肌に馴染まなくなっている。実家の自分の部屋だったところが、知らない人の部屋になっているみたいに。
反対に独り暮らししている小さな部屋が楓のホッとする場所に変わって来ている。
その事実に少しだけ悲しくなり、そして早くも実家から小さな自分だけの城に帰りたくなってしまうのだった。
高校生くらいに来ていた流行りのデザインの服が、今の年齢では着るのができないように。
実家に帰る度に、ホッとする以上に自分に合わなくなって来ている地元に楓は何故か鼻の奥がツンとするのを感じる。
涙は、――堪えたつもりはなかったのだが――出なかった。