タイプではありませんが

 病気のことは東京に住んでいる柊にしか話していない。入院のときに身内として駆けつけてくれたのも兄だ。
 離れて暮らしていると、気持ちも離れるようだ。頼る身内、と思ったとき、それは両親ではなく兄になる。
 わざわざ田舎から出てきてもらうのが申し訳ないと思うから。いや、それは言い訳。
「お前が言わないのなら黙っておくけど、後から知ったら悲しむぞ」
 楓は兄の忠告に頷いた。わかってはいるのだ。だけど、その後言われるであろう言葉を想像すると、どうしても口を噤んでしまう。
 楓の言わんとしていることを察したのだろう。柊は話題を変えた。
 その話題も決して楓の望ましいものではなかったが。

「そういえば、入院中見舞いに来ていた男とはまだ付き合っているのか?」
 楓は一呼吸おくためにエンジンをかける。エアコンの送風口からまだ温まっていない冷たい風が、楓の頭を少しだけ冷静にしてくれた。
「別れた」
 悲壮感を漂わせないように意識して言葉を発した楓に柊はホッとしたように返事をする。
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