タイプではありませんが

 柊は喋らない楓につい言い過ぎたと思ったのか、詫びの言葉を口にした。
「悪いな、つい口出しして。オフクロと変わらないな、これじゃあ」
「いいよ、事実だし。……いい気はしないけど」
 柊はもう一度詫びると真剣な顔をして呟いた。
「お前に惚れて逆に尽くしてくれる男がいればなぁ。……哲みたいに」
「兄ちゃん、聞いてたでしょ。お母さんとの話」
 これ以上他のことを話さないように、敢えて咎めるような口調で楓は言う。
 バレたか、というように笑って誤魔化す兄は、楓の言葉の鋭さなどきにした様子もなく、口を開いた。
「あ、ここでいいわ」
 ホテルの手前で楓に車を停めさせ、そそくさと降りた柊はドアを閉める前に楓に声をかける。
「良い年を。そして来年は今年よりも幸せに過ごせるように願ってるよ」
「ん、ありがとう。兄ちゃんもよいお年を」
 バタンと閉じたドアに向かって楓は深くため息をついたのだった。
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