タイプではありませんが


 あぁ、楽だ。

 星野との会話が。
 妹家族が同居してすっかり彼女たちの気配が濃くなった実家にいるよりも、今の自分をよく知っている星野と話す方がよっぽど楽しい。
 そして、同時に寂しくなる。実家だったこの場所が「居場所」じゃなくなっている現実に。

『用はなかったんだけどさ。少しだけ寂しくて、山下の声が聞きたくなったんだ』
「寂しい?星野くんに似合わない言葉だね。どこ行っても楽しそうに過ごすから」
 楓はコートを肩に羽織り、玄関から表に出る。ほうっと吐く息が白く染まる。
 昔なじみの道を歩きながら、星野に問いかけた楓にしんみりした声が続く。
『そりゃあ、俺も感傷に浸ることもありますよ』
「どしたの?」
 いつもと違う星野に楓は真剣な声で尋ねる。
 星野は聞き流してよ、と軽い口調で話し始めた。
『……なんていうのかな。当たり前だけど、こっちも俺が家を離れている間にも時間が流れててさ。周りもどんどん変わっていってて。毎年帰るたびに記憶の中の実家と、今の実家がズレてきててさ』
< 57 / 166 >

この作品をシェア

pagetop