タイプではありませんが
「楓がタイプにこだわるのはわからんでもないけどさー。アンタ、男見る目ないから」
「……それは認めるけど」
そうなのだ。楓がタイプの男性的な魅力が高い者は、女性に人気だ。
彼女の座に納まるのも一苦労なくらい倍率が高い。だからこそ付き合えた時は、少しでも愛されるために必要以上に聞き分けがいい自分を演じ、わがままひとつ言わない楓に飽きてしまった彼氏は他の女性に走る。
楓とは真逆の、守ってあげたいタイプの可愛らしい女性に。
「君は一人でも生きていけるから。この子は俺がいないとダメなんだ」
何度、この台詞を人生で聞いてきただろう。それでも、惚れられて付き合うよりも、惚れて付き合い自分が傷つく方が、相手を傷つけるよりも百倍はマシだ。
「タイプじゃないのに付き合って、やっぱり好きになれないって振る方がひどいじゃん」
楓は遠い目をしながら呟いた。脳裏に浮かんでいたのは、振った時の哲の顔。
人生で唯一惚れられて付き合い、結局好きになれなくて、楓から振った男性。
振ったときの愕然とした哲の顔は、ある意味トラウマとして楓の心に刻み込まれている。
年末に会った時の哲の幸せそうな顔で少しだけ救われているが。