タイプではありませんが
※
「山下、ちょっと待って。途中まで帰ろう」
定時過ぎに職場を出た楓を追いかけてきたのは、星野だった。
「あれ?今日星野くん、今日は早いね?」
楓達、営業事務は月末に処理が立て込むが、営業はこの中旬から月末にかけては数字作りで忙しいのだ。
「今日はね。明日、商談で休日出勤なんだ。だから今日は定時で」
「そうだった!大変だね」
「山下もしてただろ?営業の宿命だよね」
何気なくいう星野に治まっていたささくれだった気持ちが蘇る。
羨ましい。
妬ましい。
私だって、その場所に居たかったのに。
星野が悪いわけではない。もちろん楓自身が悪いわけでもない。
病気になっただけ。
命に関わる病気ではない。治療法も確立されている。通院して毎回血液検査があるのは嫌だが、基本的には投薬で日常生活を送ることができる。
周りは口々に甲状腺ホルモンの乱れは不妊の原因にもなるから、早めにわかってよかった、事務ならインセンティブはつかないけどほとんど残業もないし、休日出勤もないからゆっくり治療できるね、と励ましてくれる。