タイプではありませんが

10. キスの残り香


 何度目かのため息をつき、楓はテレビを消した。
 休日のテレビから流れるにぎやかな芸能人の声で昨日の出来事を忘れたかったが、そう上手く記憶は無くならない。

 ボーっとしていると、昨日のキスの感触が蘇る。
 星野の唇が触れるのは二回目なのに、繰り返し思い出すのは昨日の分。
 熱くて激しくて蕩けそうで。
 いつも冷静でスマートな星野にあんな情熱的な面があるとは思って見なかった。
 告白の後は連絡も増え積極的にはなったが、まだ楓の知っている星野だった。
 だけど、昨日の彼は。

 全然知らない男のようだった。
 楓の好みの身長ではない。体も筋肉質ではないけど。強引で雄の欲にまみれて。

 キス一つで告白のことも、嫉妬していることも、営業に戻れない悔しさも全部吹っ飛ぶくらい欲情した。
 あの時、星野の元カノのことを思い出さなければそのままホテルで体を重ねていても可笑しくないくらいに。
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