タイプではありませんが
「げっ」
部屋番号を聞かれた時から予想はしていたが、案の定星野が画面に映っていた。そのままシカトしておけばよかったのに、いつもの癖で通話ボタンを押してしまう。
『開けて』
繋がった途端食い気味に話す星野。こんな強引な言い方をする星野は珍しい。
言葉に流されそうになるが、楓は自分の格好を見て一瞬冷静になった。
「えっと……」
今の楓はすっぴんメガネに、部屋着のキャラクターのトレーナーに下はジャージだ。
おまけにさっきまで楓がウダウダしていたコタツ机の上には、朝ごはんの食べかけのパンとコーヒーが置いてある。
人前に出れるような格好ではない。
『早く開けて。開けるまでここから退かんから』
集合住宅なのにそんなの困るに決まってる。珍しく強い口調のモニター越しの星野は、本気だ。
「……わかった」
楓はしぶしぶ玄関に向かったのだ。
※
「よかった、出てくれて」
ほっとしたような顔をした星野は、いつもの冷静さを取り戻していた。
「全然連絡取れんから心配しとった」
あ、お国訛り。ということはこれは星野の本音だ。
さっきまで変なことを考えていたからか、まともに星野の顔を見れない。つい突き放した言い方をしてしまう。
「商談は?」
「問題なし。作ってくれた資料が役立った。サンキューな」